中学生の不登校|親が取るべき対応、親自身のメンタルの対処について
また、今現在は不登校ではないけれど、「不登校になるかもしれない」「学校が苦手かもしれない」といった心配な親御さんに向けてのアドバイスから行います。
一番大切なことは、お子さんのことを親御さんだけ(ご家庭だけ)で抱え込まずに、学校、医療機関、不登校のサポート団体などに相談することです。
この記事は、キズキの事例、参考資料、精神保健福祉士である私の知見から、中学生の不登校の前兆や不登校の中学生への関わり方、親御さん自身の気持ちへの対処法、その後の進路や相談先をお伝えします。
この記事を読むことで、お子さんはもとより、親御さんの「生きやすさ」にもつながっていくと思います。
中学生のお子さんの不登校をご心配かとは思いますが、リラックスしてお読みください。
私たち、キズキは、不登校のお子さんを、13年間で3,000名以上サポートしてまいりました。不登校についての無料相談を行っており、親御さん自身のお悩みもご相談いただけます。少しでも気になるようでしたら、お気軽にご連絡ください。
目次
不登校の予兆・前兆
お子さんがすでに不登校になっている場合は、次章「親御さんにできる、不登校の中学生への4個の対応」までお進みください。
不登校の状態になるまでには、お子さんの気持ちや体調は変化していきます。
変化の予兆・前兆は、ご家庭や学校で現れることが多いので、例をご紹介します。
ただし、ご紹介する予兆・前兆はあくまで一例です。
また、特に思春期を迎えた中学生は「それまで」と異なる行動をするようになることも珍しくありません。
そのため、この予兆・前兆がなければ不登校にならないわけでも、あれば必ず不登校になるわけでもありません。
ご紹介する内容を参考としてご覧になった上で、「普段と違うな」「気になるな」と思うことがあるなら、中学校の先生、スクールカウンセラー、(不登校の)中学生をサポートする団体などに連絡・相談してみましょう(サポート団体は、後でご紹介します)。
①家庭における不登校の予兆・前兆
家庭における不登校の予兆・前兆は、一般に気持ちの不調、体調の不調として現れることが多いです。
公益財団法人日本財団の調査によると、次の理由が多く見られます。(出典:※PDF「不登校傾向にある子どもの実態調査」)
・朝、起きられない
・学校に行こうとすると体調が悪くなる
精神保健福祉士としての知見からは、(実際に不登校になるかどうかに関わらず)無気力に向かう予兆・前兆として、以下のようなものが考えられます。
・顔色が悪い
・つらそうな様子が続いている
・(特に中学校についての)発話・会話が減る
・食欲がなくなる
・夜眠れていない
・夜更かしをするようになる(ゲーム、スマホ、マンガ、動画視聴など)
・登校する前夜や朝に、腹痛・頭痛などの症状を訴えるようになる
・朝なかなか起きられない
この段階で、中学校に行きたくないこと自体や、その理由について、言葉で伝えてくるお子さんは多くありません。
言葉にして「中学校に行きたくない」と言うときは、予兆・前兆の段階を超えて、お悩みなどがかなり深い状態になっているケースが多いです。
いずれにせよ、できるだけ早く学校・医療機関・不登校のサポート団体などへ相談しましょう。
②学校における不登校の予兆・前兆
学校における予兆・前兆として、同じく日本財団の調査によると、次のようなものが見受けられます。
・授業についていけなくなる
・学校で居心地が悪そうにしている
・友達とうまくいっていない
・先生とうまくいっていない
精神保健福祉士としての知見からは、(実際に不登校になるかどうかに関わらず)無気力に向かう予兆・前兆として、以下のようなものがあると考えられます。
・中学校での活動に消極的になる(部活を辞めたがるなど)
・友達と過ごす時間が減る
・気持ちや身体の不調から、保健室に行ったり早退したりすることが多くなる
・ぼーっとしている時間が増える
学校での予兆・前兆については、親御さんでは気づきづらいかもしれません。
気になるようであれば、担任の先生や部活の顧問の先生など連絡を取って様子を尋ねてみましょう。
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詳しく見る親御さんにできる、不登校の中学生への4個の対応
ただし、お子さんのことを親だけ(ご家庭だけ)で抱え込まないようにしましょう。
ご紹介する対応についても、サポート団体などに相談して、「あなたのお子さんに向いた、具体的な方法」を探りながら実施していくことをオススメします。
対応①登校再開にこだわりすぎない
不登校という状態に不安になるあまり、次のように考える親御さんは多くいらっしゃいます。
- 「できるだけはやく登校させないと」
- 「保健室登校などの形でもいいから中学校に復帰させないと」
ですが、お子さんを無理に登校させること、学校復帰にこだわることはオススメいたしません。
なぜかというと、何らかの理由があって中学校に行かない選択をされたお子さんにとって、「無理に学校に行く」ことは、さらに悩みが深くなることを意味するからです。
そのため、「登校再開(学校復帰)」ではなく、次のようなことを目指すようオススメします。
- 「子どもが元気になること」
- 「子どもが外の世界に興味を持って関われるようになっていくこと」
対応②家庭を安心できる場にする
家庭が安心できる場所であることで、お子さんは、家庭を足がかりに「外の世界」にも踏み出せます。
例えば、前項とも関連して、学校に関する話題を頻繁にしていませんか?
・「そろそろ中学校に行けないかな?」
・「保健室だけでも行ってみない?」
そのような話題は、タイミングが合えばよい方向に働くことはあります。
ですが、まだそんな気分ではないお子さんにとって、そうした話をされると、家庭が安心できる場所ではなくなっていきます。
中学校の話題は、お子さん自身が口にされるまでは極力せず、お子さん自身が関心のあるものについての会話を一緒にされるとよいでしょう。
関心の対象がゲーム、スマホ、マンガなど、何であっても否定せず、「お子さん本人の何かしたい気持ちを肯定」し、「何かできたときにはそれを褒める」ことを意識してみてください。
ゲームなどに印象がよくない方もいらっしゃるかもしれませんが、「興味があるものがある」ということは「他者とつながる接点がある」「他者とつながる力がある」ということと同じ意味です。
事実、ゲームを起点にして、友人関係が広がったり、仕事につながったりした元不登校の方もいらっしゃいます。
対応③親自身の生活を保ち、あせらずに待つ
言い換えると、「親は親で、自分の生活を楽しむ」となります。
不登校のお子さんのことが心配になるあまり、自分のことを後回しにしてお子さんのために尽くそうとする親御さんがいらっしゃいます。
ですが、そのような状態は、お子さんの次のような思いにつながります。
・親に心配をかけてしまっている
・自分は早く中学校に行かなければならないんだ
・つきっきりになるなんて、親は自分を信用していないな
こうした思いは、よりつらい気持ちや反発にもつながっていくのです。
親御さんが子どもにかかりきりにならず、自身の仕事・生活・趣味などを楽しむ時間を持つ。そうすることで、親子両方の心理的負担を軽減することができます。
また、親御さん自身も、後でご紹介するサポート団体などに相談したり、カウンセリングに行ったりすることもオススメです。
対応④家庭と学校以外のコミュニティにつながる
お子さんも親御さんも、ご家庭と中学校という2つのコミュニティにだけ属していると、視野が狭まったり、思考が悪い方に偏ったりすることがあります。
中学校以外の2つ目、3つ目のコミュニティにつながることで、次のようなメリットが期待できます。
・新しい視点を持てる(視野が広がる)
・人とのコミュニケーションができる
・心地よく過ごせる居場所があることで、気持ちが楽になる
学校以外のコミュニティとしてオススメな例に、次のようなものがあります。
・フリースクール
・適応指導教室(教育支援センター)
・学習塾・家庭教師
・習い事
・趣味の団体(スポーツクラブ、楽器サークルなど)
・ボランティアの団体
・インターネットのコミュニティ(SNS、オンラインゲームなど)
フリースクールや適応指導教室は、不登校の人が学校の代わりに通うことができる場所です。
学習塾・家庭教師には、不登校に特化したところもあります(私たちキズキもその一つです)。
そうしたところは、「不登校であることに配慮を受けられるコミュニティ」と言えるでしょう。
居場所になると同時に、不登校関係の悩みを相談することもできます。
他の例は、「自分が不登校であることを気にしなくてもいいコミュニティ」と言えるのではないでしょうか。
お子さんに合いそうなコミュニティがあるか、インターネット検索などで調べてみることをオススメします(後で紹介する相談先が居場所になったり、コミュニティを紹介されたりすることもあります)。
なお、特にインターネットのコミュニティには、不安がある方もいるでしょう。
ですが、ネットにはいろんな人がいます。
不登校の悩みを共有したり相談し合ったり、趣味について話し合ったりと、メリットは少なくありません。
ただし、一部には「悪い大人」がいるのも事実です。そのため、後でご紹介する相談先で、「子どものネット利用方法」などを聞いてみることもオススメです。
フリースクールについては、コラム「フリースクールとは?不登校の子が利用するメリット・費用・種類」で、さらに詳しく解説しています
不登校の中学生に関する、親自身の不安などについての考え方
①親御さんによくある不安など
中学生のお子さんが不登校になったとき、多くの親御さんは、次のような不安などを抱えます。
・子どもの進路・将来はどうなるのだろうか
・不登校は解決するのだろうか
・中学校の先生がしっかりしていなかったからではないか
・私の育て方が悪かったのではないか
・あのときああしていれば(ああしなければ)よかったのではないか
ですが、こうした不安などは、現実的にはあまり意味がないことがあります(次項以下に続きます)。
②不登校になったからと言って、将来が閉ざされるわけではない
まず、不登校の中学生の高校進学率は85%を超えています(次章で詳しく紹介します)。
つまり、不登校になったら進路・将来が閉ざされるということもありません。
元不登校生へのインタビュー調査では、次のように、不登校経験を前向きに捉えている方も珍しくありません。(出典元:文部科学省「不登校に関する実態調査」 ~平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書~(概要版))
・休んだことで今の自分がある
・成長した・視野が広がった
・出会いがあった
・人とは違う経験をした
・人に優しくなった
「不登校によって勉強、友人、進路等でのマイナスがあった」という意見ももちろんありますが、不登校経験は必ずマイナスに影響するとは限らないのです。
また、マイナスの影響も、将来的になくしていくことは可能です。
③不登校の原因探しには意味がないこともある
次に、「何が悪かったのか」という「不登校の原因」についてです。
文部科学省の、「不登校の基本認識」をご紹介します(一部編集しています)。
- ・不登校は、特定の子どもに特有の問題があることによって起こることではなく、どの子どもにも起こりうる
- ・不登校は、その要因・背景が多様である
つまり、どのようなお子さんでも、どんな子育てをしていても、様々な原因で不登校になることがあるのです。
2019年度(令和元年度)には、全国の中学生のうち、約25人に1人が不登校生となっています。(出典元:文部科学省※PDF「令和元年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」69頁)
これらのデータからも、不登校という状態が「どの子どもにも起こりうるもの」ということがおわかりいただけるのではないでしょうか。
そして、不登校になったきっかけとしては「一つの原因」があるかもしれませんが、その後不登校が継続する理由は様々に考えられます(ただし、明確な原因が本人にもわからないこともあります)。
例えば、不登校になったきっかけは「先生に理不尽に怒られたこと」だったとしましょう。
ですが、不登校が継続している理由は、「先生のことはもうどうでもいいんだけど、不登校中に昼夜逆転になって朝起きられないから」というケースもあります。
④過去ではなく、今とこれからを考えましょう
不登校のきっかけという「過去」にはこだわりすぎず、「今」と「これから」を考えて、お子さんに接するようにしましょう。
しかし、不安はなかなか拭えないと思います。そのため、ぜひ不登校生支援の経験がある相談機関につながっていただき、不安や心配を解消する助けとしていただけたらと思います。
不登校の中学生の進路
ほとんどの方は、不登校からの「次の進路」を見つけているということです。
一方で、残りの15%は高校に進学していないということになりますが、高校は、「中学卒業後、すぐに、必ず行かなくてはいけないところ」ではありません。
中学卒業からしばらく経ってから、通信制高校や定時制高校などに通うことはもちろん可能です。
また、大学や専門学校に進学したいのであれば、高校卒業ではなく高卒認定を取得するというルートもあります。
不登校になったとしても、進路・将来は閉ざされません。
近年は不登校対応を専門にしている行政窓口、塾なども増えています。
私たちキズキでも、不登校の方々が高校・大学進学や就職などの様々な進路へつながるお手伝いをしてきました。
ぜひ、不登校サポートの知識・経験のある場所につながって、一緒にお子さんの将来を考えていきましょう。
中学生の不登校の相談先
・担任の先生
・スクールカウンセラー
・教育支援センター(適応指導教室)
・特別支援教育コーディネーター
・ひきこもり地域支援センター
・児童相談所
・青少年センター
・子供家庭支援センター
・保健所
・精神保健福祉センター
・フリースクール
・学習塾
・家庭教師
・親の会やNPOなど
ただ、調べるにも時間がかかるでしょう。
調べるのが大変な場合は、「担任の先生(またはスクールカウンセラー)」か「市区町村役所の総合窓口」に、お子さん(と親御さん)の状況を伝えることで、適切な窓口を紹介してもらえると思います。
また、私たちキズキでも、不登校の中学生についての無料相談を行っていますので、気になる方はお気軽にご連絡ください。
まとめ〜不登校の中学生のお子さんを、親御さんだけで抱え込まないでください〜
中学生のお子さんが不登校だと(不登校になるかもしれないと)、親御さんとしてはとても心配になるでしょう。
「早く学校に行ってほしい」と思うお気持ちはよくわかります。
しかし、そういう状態のお子さんには、心の回復、気力の回復が必要になります。
登校再開よりも、自己否定感を和らげ、自己肯定感や外への興味を取り戻せるようになるのが先決です。
そのためには「不登校を認める」「(中学校に行けていなくても)あなたがいてくれることがうれしい」という気持ちを持って、その気持ちを伝えるコミュニケーションを心がけてみてください。
そうすることでご家庭は「安心できる場」になり、お子さんが顔を上げて一歩を踏み出すための土台となります。
そして、次のようなことも覚えておくことで、お子さんだけではなく、親御さんの心も軽くなるはずです。そうすれば、「これからのこと」をより前向きに考えられるようになると思います。
- 「不登校は、うちの子だけではない(特定の子どもだけに起こるものではない)」
- 「親だけでがんばらない(相談機関、支援者につながる)」
- 「学校復帰にこだわりすぎない」
- 「親自身の生活を保ち、あせらずに待つ」
- 「専門家、カウンセラー、相談機関などで親も話せる場を持つ」
お子さんも親御さんも、サポートする人や相談できる人はたくさんいます。
そうした人たちと積極的に話をして、一緒にお子さんをのサポートをしていきましょう。
この記事が、お子さんと、親であるあなたのお役に立ったなら幸いです。
さて、私たち、キズキは、不登校のお子さんのための塾&家庭教師です。
13年間で3,000名以上、不登校のお子さん・親御さんをサポートしてまいりました。
不登校についての無料相談を行っており、親御さん自身のお悩みもご相談いただけます。
少しでも気になる方は、お気軽にご連絡ください。
監修:安田祐輔
やすだ・ゆうすけ。発達障害(ASD/ADHD)によるいじめ、転校、一家離散などを経て、不登校・偏差値30から学び直して20歳で国際基督教大学(ICU)入学。卒業後は新卒で総合商社へ入社するも、発達障害の特性も関連して、うつ病になり退職。その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。経歴や年齢を問わず、「もう一度勉強したい人」のために、完全個別指導を行う。また、不登校の子どものための家庭教師「キズキ家学」、発達障害やうつ病の方々のための「キズキビジネスカレッジ」も運営。
【新著紹介】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法』
(2022年9月、KADOKAWA)
Amazon
KADOKAWA公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2023年7月現在10校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年7月現在4校)
【著書など(一部)】
『暗闇でも走る(講談社)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』)
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
共同監修:半村進
はんむら・すすむ。1982年、茨城県生まれ。東京大学文学部卒。
小学校時代から転校を繰り返し、運動ができないこと、アトピー性皮膚炎、独特の体形などから、いじめの対象になったり、学校に行きづらくなっていたことも。大学に入学してようやく安心できるかと思ったが、病気やメンタルの不調もあり、5年半ほど引きこもり生活を送る。30歳で「初めてのアルバイト」としてキズキ共育塾の講師となり、英語・世界史・国語などを担当。現在はキズキの社員として、不登校・引きこもり・中退・発達障害・社会人などの学び直し・進路・生活改善などについて、総計1,000名以上からの相談を実施。
執筆:西村二架
にしむら・にか。精神保健福祉士。
1992年生まれ。関西学院大学文学部卒業後に京都医健専門学校で学び、2019年に国家資格・精神保健福祉士資格を取得。2018年8月から、キズキ共育塾(不登校・中退・発達障害・社会人などのための個別指導塾)で講師として勤務。現在は主任講師として国語・数学・英語・小論文・面接の学習支援およびメンタル支援を担当。また、うつや発達障害の方々のための就労移行支援事業所キズキビジネスカレッジでも英語などを教える。2023年現在、TOEIC890点を所持。