不登校の中学生の将来は広がっています!統計から見る進路と親にできる6対応
また、残りの約20%の人も、20歳から進学や就職を目指すことはもちろん可能です。
まずは、「不登校の中学生の将来は広がっている」とご安心ください。
このコラムでは、次のようなことを解説します。
このページを読んでわかること
- 不登校の中学生の進学・就職などの割合
- 不登校の中学生の「その後」について(20歳時点)
- 不登校経験者が後悔しやすいこと
- 不登校の中学生の親御さんにオススメの対応
大切なことは、お子さんのことを親だけ(ご家庭だけ)で抱え込まず、学校、医療機関、不登校のサポート団体などに相談することです。
不登校の中学生の子どもの将来について悩んでいる親御さんは、ぜひ参考にしてみてください。
私たち、キズキは、不登校のお子さんを、13年間で3,000名以上サポートしてまいりました。不登校についての無料相談を行っており、親御さん自身のお悩みもご相談いただけます。少しでも気になるようでしたら、お気軽にご連絡ください。
目次
不登校の中学生の将来〜データで見る進学と就職の割合など〜
中学生段階で不登校でも、将来は広がっているということです。
ただし、「特に何もしていない人」や「引きこもりになった人」も、いないわけではありません。
しかし、そういう状態から「次の一歩」に進むことももちろん可能ですので、変に不安にならないようにしましょう(その上で、サポート団体などを積極的に利用しましょう)。
ここからは、文部科学省の調査に基づいて、詳しいデータなどをご紹介します。
データ①不登校の中学生が20歳になったとき、81.9%は進学や就労している
文部科学省の調査で、「不登校だった中学3年生が20歳になったとき、81.9%は就学・就業をしている」というデータが示されています。(出典:「『不登校に関する実態調査』~平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書~(平成26年7月9日)」、次章で詳しく紹介します)
この数字は、不登校経験者のサポートを行っている私たちキズキの実例から見ても、意外なものではありません。
中学生のお子さんが不登校だと、不安や苦労が伴うことは否定しません。
ですが、「今の学校」に合わないからといって、別の学校や社会が合わないわけではないのです。
「たまたま同じ地域に住んでいる人が通う公立中学校」や、「カリキュラムや教育方針が決まっている私立中学校」などになじめなくても、お子さんの将来は開けますので安心してください。
データ②残りの約20%も、将来的に進学・就職は可能
前項の数字は、「中学3年生で不登校だった人のうち、約20%は、20歳のときに進学も仕事もしていない」ということも意味しています。
しかし、この調査は、あくまで「20歳時点」での話です。
「20歳を過ぎてから大学受験を目指し、合格した人」「20歳を過ぎてから就職活動をして、働き始めた人」などは、キズキの生徒さんだけを見ても決して少なくありません。
また、不登校を経験したかどうかに関わらず、20歳のときに「浪人していた」「資格取得のために独学で勉強していた」ために所属がない人も、珍しくないでしょう。
後でご紹介するように、不登校のお子さんや、その親御さんを応援・支援する人たちもたくさんいますので、ぜひ積極的に相談・利用してみてください。
データ③引きこもりになる可能性もあることからも、サポート団体は重要
平成30年度の内閣府の調査によると、「引きこもりになったきっかけ」として「小学生・中学生・高校生時の不登校」と答えた数・割合は、次のとおりです。(参考:内閣府「令和元年版・子ども・若者白書」)
- 平成30年度:47名・複数回答数69件のうち、4件(69件の5.8%)
- 平成27年度:49名・複数回答数62件のうち、9件(62件の14.5%)
この数や割合を多いと見るか少ないと見るかは人それぞれですが、「不登校は、引きこもりのきっかけになりうる」というのは事実だということです。
さらに、不登校の中でも、対人関係に緊張・不安を有する方は引きこもり化しやすいという説もあります。(参考:高塚雄介※PDF「内閣府や東京都のひきこもり 実態調査から読み取れること ~ひきこもりの多面的理解と対応の必要性~」)
また、引きこもりにまではならなくても、不登校の結果として、勉強の機会や社会との関わりが少なくなることは、気にかけておく必要があるかもしれません。
もちろん、引きこもりになったとしても、将来的に進学や就職をすることはできます。
ですが、引きこもりの期間が長引くと、お子さんも親御さんも「大変な思い」をする期間が長くなります。
引きこもり化や何もしない期間の長期化についてのお悩みも、後述のサポート団体に相談することで、お子さんの実状に沿った対応がわかります。
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詳しく見る不登校の中学生の「その後」~20歳時点での生活状況~
文部科学省による、不登校の中学生の「その後」の追跡調査について、もう少し詳しく解説します。(参考:文部科学省『「不登校に関する実態調査」 ~平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書~(概要版)』)
中学生時点で不登校だった人の20歳のときの状況は、以下のとおりです。
- 就業のみ…34.5%
- 就学のみ…27.8%
- 就学かつ就業…19.6%
- 非就学かつ非就業…18.1%
「就業」とは、正規・非正規・家業手伝い・会社経営として、働いている状態のことです。
「修学」とは、大学や専門学校などに在籍している状態のことです。
不登校の中学生が20歳になったとき、「約55%の人が働いていること」、「約50%の人は学校に在籍していること」がわかります。
具体的な就職状況と就学先については、以下のような結果が出ています。
■就職状況
- 正社員…9.3%
- パート、アルバイト…32.2%
- 家業手伝い、会社経営…3.4%
■就学先
- 大学、短大、高専…22.8%
- 高等学校…9.0%
- 専門学校、各種学校等…14.9%
繰り返すとおり、中学生時代に不登校をしても、将来は広がっているということです。
不登校の中学生の将来〜卒業直後の進路候補を4つ紹介〜
ここからは、不登校の中学生の進路選択についてご紹介します。
「お子さんの進路・選択肢はある」という安心材料にしていただいた上で、実際に「あなたのお子さん」に向いた進路については、お子さんとも話しつつ、後述する相談先の利用をオススメします。
進路①高校
1つ目の進路は、高校進学です。
不登校であっても(不登校経験があっても)、お子さんが高校に進学したい場合、お子さんに合う必ず学校はあります。
■高校選びで大切なこと
- 全日制高校、通信制高校、定時制高校など、様々な種類と特色を理解する
- 普通科以外にも、看護科、商業科、工業科など、様々な科があることを理解する
- 様々な高校を探してみて、可能であれば見学会や説明会にも参加してみる
■受験方式の種類
- 学力と内申点の両方を審査する高校
- 内申点を審査しない(学力試験だけで審査する)高校
- 内申点審査も学力試験もなく、面接や作文で審査する高校
また、お子さんが現在中1や中2であれば、受験までに学力や内申点を上げることは十分に可能です。
進路②高校以外の学校
高校以外にも、例えば、高等専修学校や高等専門学校(いわゆる高専)も、進路候補となります。
高等専修学校とは、工業・医療・衛生分野などの、職業に関連した知識や技術を学ぶことができる学校です(「専門学校の基礎版」とイメージするとわかりやすいと思います)。
高等専門学校(高専)とは、工学や商船などの分野で技術者になるための教育を受けることができる学校です。
ともに日本全国で数万人が在籍している学校です。
■高等専修学校
- 学校数:約400校
- 学生数:約3万6千人
(平成30年度。参考:文部科学省「未来をひらく高等専修学校」)
高等専門学校(高専)
- 学校数:57校
- 学生数:約6万人
(平成28年度。参考:文部科学省「高等専門学校(高専)について」)
一定の条件を満たすと、大学受験の資格を得られる学校もあります。
進路③高卒認定
現時点で大学や専門学校への進学を目指しているなら、文部科学省が実施する高認試験(高卒認定、高等学校卒業程度認定試験)に合格するという選択肢もあります。
■高認試験に合格することで得られるメリット
- 高校を卒業した者と同等の学力があると認められる
- 高校を卒業していなくても大学や専門学校の受験が可能になる
- 就職や資格試験でも、高卒と同等として扱われる場合もある
高認は、様々な事情があって高校に通うことが難しい方には、有効な選択肢になります。
高認試験は、高校で単位を取得していれば受験を免除される科目もありますし、逆に、高認に合格した科目を単位に換算できる高校もあります。
ただし、中学卒業後に高校などに進学せず、最初から高認経由で大学や専門学校を目指すのは、以下の理由からあまりオススメしません。
■進学しない場合の注意点
- ①学校に行かないことで寂しさを感じる
- ②学校に通っている友人や知人にコンプレックスを感じる
- ③中学に馴染めなかったとしても、別の学校にも馴染めないとは限らない
高認に興味がある場合は、「最初から高認一本」というスタンスではなく、高校などの学校進学と並行して考えることをオススメします。
進路④就職(働く)
中学を卒業してそのまま働くという選択肢もあります。
社会に出て、様々な経験を積むことや自分でお金を稼ぐことで、多くの成長があるかもしれません。
ただし、中卒で働くのは、現実として厳しい側面もあります。
高卒や大卒と比べると、職業や働き方の選択肢が限られる可能性が高いのです。
「中卒で働くなんてダメだ」とは言いません。
ですが、その後の選択肢を広げるためには、前項までの学校の卒業や高認の合格も選択肢も入れるよう、お子さんと話しみてください。
もちろん、進学は中卒後すぐでなくてもいいですし、働きながらでも大丈夫です。
なお、中学卒業後に高校などを卒業すれば、中学時代の不登校と就職は、ほぼ関係なくなります。
ちなみに、お子さんが「家計の状況が厳しそうだから進学せずに働く」と思っているようであれば、次のような対応をオススメします。
- 実際に家計が厳しいなら、一緒にアルバイト・奨学金・学費の安い高校など探して、進学も視野に入れる
- 実際には家計は問題ないなら、お子さんにきちんと伝える
もちろん、一度働いてみて、その後に進学や高認取得を目指すということも可能です。
中学生で不登校を経験した人たちの後悔とは
子どもの将来について、「人生で一度しかない学生時代を不登校で過ごすなんて、後悔するんじゃないか」という心配・不安がある親御さんもいるでしょう。
実際に不登校の経験者に話を聞きたくても、「後悔してる?」なんて気軽に聞けるものではありませんし、聞けたとしても、あなたのお子さんに当てはまるとは限りません。
その内容を、私たちキズキが独自に取ったアンケートも交えて紹介します。
データ①不登校に対する後悔の有無
報告書には、不登校に対する後悔の有無として、以下のような設問があります。
今、考えると、小中学生の頃、不登校で学校に行かなかったことをどう思いますか。次の1~4の中からいちばん近いものをひとつ選んで○をつけてください。
■この設問の回答結果(有効回答数1,604)
- 1.行けばよかった 606件(37.8%)
- 2.しかたがなかった 494件(30.8%)
- 3.行かなくてよかった 183件(11.4%)
- 4.何とも思わない 273件(17.0%)
- 未回答・無効回答 48件(3.0%)
この回答結果をもう少し丸めると、次のようになります。
- 「行けばよかった」と後悔の念を抱いている人が最も多く、37.8%
- 「行かなくてよかった」という肯定的な回答は最も少なく、11.4%
- 「行けばよかった」は「後悔がある」で、37.8%
- 「しかたがなかった」は「中立的」で、30.8%
- 「行かなくてよかった」「何とも思わない」は、「後悔がない」で、28.4%
こうすると、不登校について「中立的」「後悔がない」という人の割合が、「後悔がある」人たちよりもかなり多いことがわかります。
データ②不登校に対する後悔の内容
当該項目は、「不登校により失ったものがある」と回答した人数を100とし、失ったものの具体的内容の内訳をパーセンテージで示しています。
(a)学力、勉強(14.6%)
- 一般知識が欠如していると感じる
- 進みたい学校に進学できなかった
- 不登校による勉強不足で、高校、専門学校、大学でも学力差や勉強についていけない感覚がある
(b)友人関係(6.9%)
- 不登校当時に友人との時間が持てなかった
- 学生時代の友人が少なく、周囲がうらやましい
- 留年や浪人で、同級生が年下になった
- 学校でもっと友人をつくればよかった
(c)進路(10.9%)
- 進学や就職に悪影響を感じた
- 不登校でなければもっといい進学先や就職先に行けた
- 「今の自分の力ではこんな仕事しかできない」と自己否定的になった
(d)思い出(6.3%)
- 学校の楽しい思い出ができなかった
- 今の友人と、中学時代の思い出を語り合えない
- 成人式で、周りの参加者と思い出を共有できなかった
また、キズキの生徒さんたちからは、次のような声もあります(一部です)。
- 中学で不登校になって、そのまま学校の友達と会わなくなった。そのモヤモヤを5年も引きずっている
- 学校行事に参加する、友だちと買い食いする、ちょっと誰かとケンカするといったような、中高生時代にしか体験できないことができなかった
- 不登校であることに劣等感を持って、面白そうな場所や活動にどんどん行けなくなった
- 高校を不登校から中退したことで最終学歴が中卒になって、進学や就職で不利になった(から、今学び直している)
- 些細なことで先生とケンカをして高校を不登校になったけれど、もっとよく考えてから行動すればよかった
データ③不登校を後悔していないという意見
逆に、不登校を肯定的にとらえている人の意見もあります。
報告書の内容及びキズキの生徒さんの声を、分類・要約して見てみましょう。
当該項目は、「不登校により得たものがある」と回答した人数を100とし、得たものの具体的内容の内訳をパーセンテージで示しています。
(a)休んだおかげで今の自分がある(18.9%)
- 苦しんでいた時間があったから今の自分がいる
- 不登校のつらさを乗り越えて自信がついた
(b)成長した、視野が広がった(13.2%)
- 自分のことや周りのことが見つめ直せて成長できた
- 肯定的な休息だった
- 学校のメリット・デメリットが俯瞰的に見えた
(c)出会いがあった、学校に巡りあった(16.0%)
- 不登校の間に、新しい友達やカウンセラーなど、自分を支えてくれる存在と出会えた
- 不登校の自分を見捨てないでいてくれる友人や先生の大切さを実感した
(d)人とは違う経験をした(11.3%)
- 学校では得られない経験を積んだ
- 他の人とは違う見方ができるようになった
(e)その他
- 同じ経験をしている人の気持ちが理解できる
- 自分で決めたことなので後悔はしていない
- 無理して学校に行っていたら取り返しがつかなかったかもしれない
- 学校に行っていても今よりいい状況になるかわからない
- 友だちもいるし仕事もしているので後悔はない
また、キズキの生徒さんからは、次のような声があります(一部です)。
- 登校し続けていたら精神的な不調が悪化したかもしれず、それを防げてよかった
- 他人と違う道を進むことに抵抗がなくなった
- 不登校をきっかけに、将来のことを真剣に考えるようになった
- 不登校のときに身につけた知識や雑学が、思わぬところで役に立った
データ④不登校を後悔しないためには、不登校期間中に「何か」をしておく方法がある
不登校期間は、学校に行かない分、自分で「何か」をする時間が多く取れます。
不登校期間中に継続して「何か」をやっておくと、継続できたという事実そのものや、それが具体的に役立つ機会によって、「不登校の期間があってよかった」と思える可能性は高まります。
ただし、心身の調子を整っていないときに無理は禁物(=心身の調子を整えることが一番)です。
嫌なことを無理やりするのではなく、楽しんでできることの方がよいでしょう。
また、もしかしたら「楽しんで」はできないかもしれませんが、「勉強」はもちろん一般論として役に立つでしょう。
不登校経験者の2つの体験談
不登校のお子さんの将来を考えるにあたって、実際の経験者の体験談を聞きたいという親御さんもいるでしょう。
体験談①全く後悔していない
「私は中学不登校から高校に進学しました。不登校だったことに全く後悔はありません。」
理由は、次の2つです。
- ①進学先で、今でもつき合いのあるかけがえのない友人たちと出会えた。
- ②今に通ずる価値観を得られた。
私は、高校受験・進学にあたり、私が中学で不登校だったことを知る人がいないであろう、地元から少し離れた学校を選びました。
不登校でなかったなら、家から遠いその高校は選ばず、違う高校に進学していましたし、今も付き合いのある友人とは出会えなかったでしょう。
また、もし不登校になっていなければ、不登校の子を支援する仕事に就くこともなかったでしょう。
自分自身が不登校というマイノリティを体験したことは、社会的にマイノリティな立場の方々や弱い立場の方々の不安や苦しみを理解する上での助けとなっています。
「ただし、後悔はしていないものの、特に高校では、中学不登校の悪影響を感じることはありました。」
- 不登校に伴い中学内容の基礎学力が完全に身についていたわけではないことから、高校で学ぶ単元の一部において、基礎がある他のクラスメイトとの間にハンデを感じたことがある。
- 不登校時の生活習慣がなかなか改まらず、平均的な生徒と比べて欠席日数も多かった。
とは言え、その悪影響は深刻なものではなかったようで、学力も出席日数も、中学に比べるとよくなっていたことは確かです。
「結果としてその後の私は、高校を卒業し、大学に進学・卒業でき、就職することもできています。」
体験談②後悔もあるが、いいこともあった
「私の場合は、不登校について、後悔もあるけれど、いいこともあったという認識でいます。」
不登校で後悔したことは、給食、授業、運動会、文化祭、合唱祭、修学旅行、卒業遠足、卒業式などのイベントを経験できなかったことです。
ただ、不登校だった当時には、そのことに気づいていませんでした。なぜなら、経験していないために、それらが楽しいかどうかもわからなかったからです。
そんな私は、その後高校と大学を卒業し、一時期は都立の学校で教師として働いていました。そして、教師として上記のようなイベントを経験したとき、(教師という立場であっても、)それらを楽しんでいる自分に気づいたんです。
そのとき私は、学校に行けなかったことをどこかで後悔していたんだなとあらためて感じました。
「しかし、不登校でよかったこともあります。」
その一番は、不登校を経験したからこそ出会えた人がたくさんいることです。
不登校でぽっかり穴があいたような気持ちだった私の心を、出会った人たちが少しずつ埋めてくれたように思えます。
よい出会いがあったこと、そしてそれに気づけたことが、不登校をしてよかったと思う理由です。
あなたのお子さんも、今現在で学校や不登校にまつわる悪影響や後悔をすでに持っていたとしても、これから楽しい時間や充実した時間を過ごすことで、それらを次第に小さくしていくことはできます。
重要なのは、不登校という過去や今にこだわりすぎず、これからの人間関係や勉強環境を大切にしていくことです。
不登校の中学生の将来に向けて、親御さんにできる6つの対応
不登校の子どもの将来に向けて、親としてできる対応はもちろんあります。
ここでは、個々人の状況にもよりますが、一般論の範囲でオススメしたい対応を紹介します。
対応①あなた自身のためにも、専門家・第三者に相談する
大前提として、まずは、お子さんだけでなく、「親御さん自身」のためにも行ってほしいことがあります。
それは、「不登校に詳しい専門家・第三者に相談してほしい」ということです。
相談先となる専門家・第三者の例としては、次のようなものがあります。
相談先の例
- 市区町村の、子育てや不登校に関する相談窓口
- 不登校の「親の会」
- メンタルクリニックやカウンセラー
- 不登校の方々を支援する民間団体(私たちキズキもその一つです)
お子さんにつきっきりになっていると、どうしてもお互いに疲れがたまるものです。
また、専門家・第三者に相談することで、それぞれのご家庭・お子さんに応じた、より適切な対応ができるようになります。
この後の項でお伝えする対応についても、「具体的に、このお子さんの場合はどうすれいい」といったことへのアドバイスももらえるでしょう。
話すだけでも気が楽になり、前向きな考えも浮かびやすくなります。ぜひ、専門家・第三者を頼ってください。
対応②お子さんの「気持ちをうまく言えない状態」を理解する
不登校のお子さんは、自分でも自分の気持ちを理解できていないことがよくあります。
思春期の子どもは、不登校じゃなくても気持ちを素直に話せないことがあります。
親御さんとしては、不登校のお子さんが何を考えているのか、何をしたいのか、気になると思います。
また、親としては、「こうなってほしい」という願望もあるでしょう。
ですが、お子さんは、「中学卒業後の将来について、話し合いましょう」「この高校についてどう思う?」などと言われても(例えそれが優しい聞き方であっても)、うまく話し合えないことがあります。
お子さんが「気持ちをうまく言えない状態」であるとご理解の上、日常の会話や行動を通じて、少しずつ将来について話していくようにしましょう。
次のように、日常を通じて「うまく言えない気持ち」を引き出していくことで、将来についてお子さんとしっかり話せるようになります。
- 料理に興味があるみたいだから、一緒に料理をしながら話してみようかな…。
- スポーツに興味があるみたいだから、一緒に観戦に行ってコミュニケーションを取ろうかな…。
対応③お子さんに「かけがえのない存在だよ」と伝える
■伝えるべきこと
- あなたはかけがえのない存在だ
- ありのままのあなたを受け入れる
- 私たちは、あなたが大切だ
不登校の子どもの方も「自分の将来はどうなるんだろう」と不安を持っていることが多いです。
しかし、前述のとおり、不安についても親にうまく伝えることができないことはよくあります。
親御さんが、明確に言葉にして「あなたが大事だよ」と伝えることで、お子さんは、「自分の親は、将来や不安の話をしても否定的にならずにちゃんと聞いてくれるかもしれない」と希望を持つことができます。
お子さんが不安について少しずつ話せるようになることで、不安はやがて解消されていくものです。
また、不登校になると、学校の友人とのコミュニケーションは少なくなります。
そのため、こういう言葉がけは、お子さんが引きこもりになるリスクを減らすことにも繋がります。
お子さんの悩みや孤独が深くならないよう、言葉にして「大事だ」と伝えていきましょう。
声掛けの応用編の例としては、お子さんが「ゲームをしたい」「○○を食べたい」「マンガを読みたい」などと言ったときには(思うところはいろいろあると思いますが)、まずは「そっか、○○したいんだね」などという言葉で受け入れてください。
また、「なんていうゲームをやりたいの?」「どこでそのマンガ買おっか?」というスタンスで話を聞くことも、お子さんの安心につながります。
対応④お子さんに、「家以外の居場所」を探す
大抵の子どもにとって、「居場所」は家と学校がほとんどです。
不登校で学校という居場所がなくなったお子さんには、居場所が家しかない状態なのです。
家にしかいないと、社会とのつながりがなくなり、どんどん内向きな思考になっていきます。
そして不登校の場合、内向きな思考はネガティブな考え方に陥りやすくなりますので、注意が必要です。
居場所の例としては、次のようなものがあります。
- フリースクールなどの不登校の子どもたちが集まるコミュニティ
- 地域の楽団や市民劇団などの趣味の集まり
- スポーツクラブや書道教室などの習い事
お子さんと話して、ぜひ居場所を見つけるようにしましょう。
しかし、「居場所」の候補が見つかっても、不登校の子どもにとって「外の世界に出る」ことは、すごく勇気のいることだと思います。
ですので、慣れるまでの間は送迎などのサポートがあると、お子さんとしても安心して外出できるでしょう。
対応⑤お子さんの「勉強する機会」を保つ
不登校になると、勉強をする時間は減りやすいと思います。
心身の調子次第ではありますが、勉強する機会を保つことも考えてみましょう。
「学校には行っていないけど勉強はしている」という状況は、お子さんの自己肯定感を持つためにも重要です。
お子さんに「勉強したい」と相談されたときは、「じゃあ学校に行きなさい」と言うのではなく、家庭教師、塾、通信講座などを一緒に探してほしいと思います。
「勉強したい」と言わないお子さんでも、「学校に行かないのに、勉強したいなんて言えないな…」と悩んでいることがあります。
お子さんの状況にもよりますが、「学校は行かなくていいけど、(塾などで)勉強する?」などと、親の方から声をかけてみることもオススメします。
対応⑥お子さんに「進学できる選択肢があること」を伝える
先ほどもお伝えしたとおり、不登校でも進学できる高校・学校はたくさんあります。
中学で不登校だと、直近で一番不安に思うことは、「高校(など)に進学できるのだろうか」ということではないでしょうか。
それはお子さん本人も同じで、以下のような不安を感じていると思います。
- 内申点が低いから、合格できないのでは…
- 受験勉強ができていないから、合格できないのでは…
- 仮に進学できても、毎日通う自信がない…
「中学の出席日数が少ないと進学できない高校」は、確かにあります。
ですが、中学不登校から進学できる高校もたくさんあります。
中学での出席日数を問わない高校もありますし、受験で学力試験がない高校もありますし、毎日通学しなくてよい高校もあるのです。
■中学不登校から進学できる学校の例
- (内申点や学力を重視しない、)一部の私立高校
- 通信制高校
- 定時制高校
- 東京都立のチャレンジスクール、神奈川県立のクリエイティブスクールなど、不登校経験者を積極的に受け入れている高校
このように、「選択肢がある」と知ったお子さんは、無用の焦りや苦しみから解放され、将来に前向きになれます。
その上で、「どんな学校なら進学できそうか、どんな学校なら通いたいか」をお子さんと一緒に考え、学校見学なども行ってみてはいかがでしょうか。
まとめ〜不登校の中学生の将来は、広がっています〜
今回のまとめ
- 不登校の中学生の将来としては、20歳時点で、約8割が進学・就労している
- 20歳を超えてからも、進学や就職はもちろん可能
- 不登校経験を後悔しないように、子どもの話をよく聞くことが大切
- 具体的な進路選びのときには、専門家や第三者にアドバイスを求めるように
この記事が、不登校からの高校受験を考えているお子さんと、親であるあなたのお役に立ったなら幸いです。
さて、私たち、キズキは、不登校のお子さんのための塾&家庭教師です。
13年間で3,000名以上、不登校のお子さん・親御さんをサポートしてまいりました。
不登校についての無料相談を行っており、親御さん自身のお悩みもご相談いただけます。
少しでも気になる方は、お気軽にご連絡ください。
監修:安田祐輔
やすだ・ゆうすけ。発達障害(ASD/ADHD)によるいじめ、転校、一家離散などを経て、不登校・偏差値30から学び直して20歳で国際基督教大学(ICU)入学。卒業後は新卒で総合商社へ入社するも、発達障害の特性も関連して、うつ病になり退職。その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。経歴や年齢を問わず、「もう一度勉強したい人」のために、完全個別指導を行う。また、不登校の子どものための家庭教師「キズキ家学」、発達障害やうつ病の方々のための「キズキビジネスカレッジ」も運営。
【新著紹介】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法』
(2022年9月、KADOKAWA)
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KADOKAWA公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2023年7月現在10校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年7月現在4校)
【著書など(一部)】
『暗闇でも走る(講談社)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』)
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
共同監修:半村進
はんむら・すすむ。1982年、茨城県生まれ。東京大学文学部卒。
小学校時代から転校を繰り返し、運動ができないこと、アトピー性皮膚炎、独特の体形などから、いじめの対象になったり、学校に行きづらくなっていたことも。大学に入学してようやく安心できるかと思ったが、病気やメンタルの不調もあり、5年半ほど引きこもり生活を送る。30歳で「初めてのアルバイト」としてキズキ共育塾の講師となり、英語・世界史・国語などを担当。現在はキズキの社員として、不登校・引きこもり・中退・発達障害・社会人などの学び直し・進路・生活改善などについて、総計1,000名以上からの相談を実施。