発達障害の相談はどこにする?8つの相談窓口・病院での診断の流れも
お子さんの発達障害が「どんな特性があるか」「どの程度なのか」にもよりますが、専門家に相談することがオススメです。
親子だけで悩まずに専門家に相談することで、お子さんも親御さんも、より「生きやすく」なっていきます。
この記事を読むことで、発達障害に関する相談先が分かり、親子ともに今後の参考になるはずです。
また、今回は発達障害であるお子さんの親御さん向けの内容となっていますが、大人になってからご自身の発達障害に気づいた(もしくは発達障害かもしれないと思っている)方にも、役立てていただけます。
私たち、キズキは、発達障害や不登校のお子さんを、13年間で3,000名以上サポートしてまいりました。無料相談を行っており、親御さん自身のお悩みもご相談いただけます。少しでも気になるようでしたら、お気軽にご連絡ください。
目次
発達障害の概要
はじめに、発達障害の概要をお伝えします。
すでにご存知の方は次章「発達障害の診断を受けるメリット・デメリット」へ、また確定診断が出ている場合は「発達障害の相談先・窓口」へ進んでください。
①発達障害とは
発達障害とは、「脳の機能のバランスに偏りがある状態」です。
身体の機能と同じように、脳の中にも様々機能があります。
その脳の中にある心の機能のバランスが悪い(ばらつきがある)ことが、発達障害と呼ばれているのです。
もちろん、誰にでも脳や心の機能に、多少のばらつきはあります。
その上で、ばらつきの程度が大きく、その特性によって学校生活や日常生活の妨げになることを発達障害と言うのです。
②発達障害の原因
発達障害は生まれつきのもので、親の育て方や家庭環境によるものではありません。
また、「乳幼児期から特徴が見られ、成長してから発達障害になる」こともないのです。
そのため、発達障害の診断には、子供時代の様子がどうだったかの記録や養育者等の証言が必要になります。
ただし、子供の頃に発達障害の存在を知らなかったり、診断を受けていなかったりすることで、大人になって「発達障害だと気づく」ケースは少なくありません。
発達障害の根本的な原因はまだわかっていません。また、発達障害は病気ではないため「治る」ものでもありません。
発達障害は病気ではなく「個性」であり、そもそも治す必要はないと言う専門家も多くいるのです。
③発達障害の主な3種類
発達障害は、主に次の3種類に分けられます。
- 1:自閉スペクトラム症(ASD):コミュニケーション能力に困難があり、人間関係を作っていくことが苦手な発達障害。こだわりが強く、感覚過敏であることも。
- 2:注意欠如・多動症(ADHD):「不注意、多動性、衝動性」が極端な発達障害
- 3:限局性学習症(SLD):全般的な知能には問題はないが、「読む、書く、計算する」など特定の分野のみが極端に苦手な発達障害
これらの発達障害による特性は、ある程度は誰にでも当てはまります。
また、「発達障害かどうか」は、医師だけが判断できるのです。
そのため、親御さんだけで「発達障害だ(発達障害ではない)」と決めつけず、不安な場合は、医師や後述するサポート団体、市区町村役所の相談窓口に相談することをオススメします。
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詳しく見る発達障害の相談先・窓口
続いて、発達障害の相談先や相談窓口をご紹介します。
結論からお伝えすると、発達障害のお悩みは、スクールカウンセラーや医療機関、市区町村の子育て担当課など、様々なところで相談できます。
それぞれの相談先・窓口については、これから1つずつ詳しく解説します。
どこに相談すればいいか迷う場合は、まずは学校やかかりつけの小児科医、市区町村役所の窓口の担当者に相談することがオススメです。
相談先①スクールカウンセラー
学校に在籍するスクールカウンセラーは、一番身近な発達障害の専門家です。
公認心理師など心理の専門家や、元教員などの教育の専門家が、スクールカウンセラーとして週に何度か学校に来て、心の相談を受け付けています。
また、スクールカウンセラーへの相談はお子さんだけでなく、親御さんも可能です。
スクールカウンセラーは、学校への問い合わせや担任の先生を通して、紹介してもらえます。(スクールカウンセラーのいない学校もあります。その場合は都道府県の教育委員会にカウンセラーがいることが多いので、どこで相談ができるか担任の先生や学校に問い合わせてみましょう。)
発達障害の診察を受けるかどうかや、お子さんとの関わり方の相談にも対応しているので、医師の診察を受ける前に、まずはスクールカウンセラーに相談するといいでしょう。
相談先②医療機関
医療機関には、小児精神科や児童に詳しいクリニック、かかりつけの小児科などがあります。
かかりつけの病院があれば、小さい頃からの様子を知っているので、まずはそこで相談してみることがオススメです。
かかりつけ医から専門医へ紹介状を書いてもらうこともできます。
カウンセリングは様々な人が行っていますが、一般的に「臨床心理士」「公認心理師」などの資格を持ったカウンセラーがよいでしょう。
また、病院によっては、資格を保有するカウンセラーが在籍していることもあります。
発達障害の診断を受けるかどうかに関しては、後ほど詳しく解説します。
相談先③市区町村の子育て担当課・福祉担当課
お住まいの市区町村役所の、子育て担当課・福祉担当課も相談先の候補です。
例えば、東京都杉並区では、区役所を相談窓口にして、「発達支援を必要とする学齢期の発達障害の方に対し、区が委託する事業所で療育等を行い、社会生活を円滑に行えるよう支援」を受けられます。(参考:杉並区「障害者施策課 発達障害児相談担当係」」)
相談先④発達障害支援センター
発達障害支援センターとは、各都道府県等に設置されている、子供から大人まですべての発達障害の人をサポートする公的な支援機関です。
そのため、発達障害のお子さんはもちろん、大人になってから「もしかしたら発達障害かも」「大人になってから発達障害と診断されたけど、どうしたらいいかわからない」と悩む人の相談先にもなるでしょう。
発達障害支援センターによって活動内容は様々で、心理師によるカウンセリングや医師による診察を行っているところがあります。
具体的な活動内容は、お住まいのセンターに問い合わせてみてください。全国の一覧はこちらです。
相談先⑤保健所・保健センター
保健所・保健センターでは、保健師に相談ができます。
保健師とは、厚生労働大臣免許を受けた、地域住民の健康相談に応える専門家です。
相談先⑥児童相談所
児童相談所は、各都道府県に設けられた児童福祉のための専門機関です。対象は17歳までの子供となっています。
養護相談や保健相談だけでなく、発達障害などの心の相談や子育て相談も可能です。
なお、児童相談所の補助機関として、児童家庭支援センターもあります。
相談先⑦教育センター・特別支援教育センター
各都道府県や政令指定都市等に設置されている教育機関です。教育に関する研究や、教員・子供・保護者を対象とした教育相談を行っています。
教育の現場に長く携わっていた経験のある人が、学習やいじめ、発達障害などの心理的な問題などの相談もできます。
必要に応じて心理師が相談に同席することもあります。
相談先⑧発達障害に理解のある塾・家庭教師
お子さんが発達障害によって勉強が苦手な場合は、塾や家庭教師に相談しましょう。
発達障害に対応した塾や家庭教師であれば、お子さんそれぞれの特性を考慮した上で、お子さんに適した勉強方法を一緒に考えて勉強に取り組めます。
また、特性に関連したコミュニケーション方法や進路選び、悩み事などを相談できることも多いです。
気になる場合は、「発達障害 家庭教師 ○○市」などの検索で、お住まいの近くにどのような候補があるか探してみることをオススメします(私たちキズキもその一つです)。
発達障害の診断を受けるメリット・デメリット
お子さんが発達障害かもしれない親御さんが、医師の診断を受けることをためらうことは少なくありません。
お子さんが「障害」と診断されることに不安を感じるお気持ちは、とてもよくわかります。
ここでは、発達障害の診断を受けるメリットとデメリットを、詳しくお伝えします。
①発達障害の診断を受けるメリット
主なメリットは、次の3点です。
- 1:特性をしっかり理解できる
診断をもとに主治医と話すことで、お子さんに合った関わり方や進路がわかります。また、主治医と相談しながらサポート機関や学校を探せる場合もあるでしょう。
お子さんに適した環境を整えることは、発達障害の子供が陥りやすい「落ちこぼれ」や「いじめ」を回避することにも繋がります。
※発達障害の診断を受けた場合、教育委員会から「通常のクラス」とは違う教室や学校などでの学習を提案されることがあります。しかし、指示に「従う」か「従わない」かの選択権は親御さんにあるので、ご安心ください。
- 2:学校などにサポートを依頼しやすくなる
学校にお子さんの特性への合理的配慮を依頼する場合、医師の診断があった方が認められやすくなります。
また、学校以外のサポート団体でも、診断があった方が利用しやすかったり、話がスムーズに進みやすかったりすることもあるのです。
- 3:障害者手帳を受けられる可能性がある
発達障害の程度によっては障害者手帳が交付され、それに伴う公的な福祉サービスを受けられます。
②発達障害の診断を受けるデメリット
発達障害の診断を受ける主なデメリットは、次の2点です。
だだし、これからお伝えするデメリットは、「必ず発生する」ものではなく、「発生する可能性がある」ものです。
なお、前提として、医師から「発達障害である」と確定診断が出た場合、診断を取り下げてもらうことはできません。
- 1:偏見にさらされる可能性がある
残念ながら、現代の日本では発達障害への偏見が全くないとは言い切れません。
そのため、診断が出た場合に偏見にさらされる可能性があります。
ただし、学校や職場で発達障害であることを開示する義務はなく、自ら公表しない限りは周囲に伝わることはないので、ご安心ください。
- 2:劣等感を持つ可能性がある
お子さんにとって、自身の発達障害を自覚することは、とても大切です。
しかし、診断を受けて発達障害だとわかることで「自分は発達障害だから、○○ができない」「悪い意味でみんなと違う」など、劣等感を持つ原因になる可能性があります。
③発達障害の診断を受けるかの判断について
ここまでにお伝えしたメリット・デメリットを踏まえると、発達障害の診断を受けるべきかどうかは、お子さんの個別の事情によって違ってきます。
とはいえ、発達障害の診断を受けるかどうかに関わらず、発達障害の傾向のある子供は劣等感を抱きやすいため、心のサポートは必要です。
また、発達障害の診断がなくても、受けられる支援やサービスもたくさんあります。
検査を受けるべきかお悩みの場合は、一人で抱え込まず後ほどご紹介する医療機関や支援機関、市区町村役所の相談窓口などに相談してみてください。
発達障害の診察を受ける際の流れ
最後に、医師の診断を受ける場合の一般的な流れをご紹介します。
医師の診断を受けるかどうか検討されている方は、ぜひご覧ください。
流れ①発達障害の診察が受けられる病院を探す
発達障害の診察を受けられるのは、小児精神科や児童精神科、子供の発達に詳しいクリニックなどの医療機関です。
お近くにそのような病院があるかは、インターネットで検索したり、かかりつけの小児科やサポート団体、役所の障害福祉担当課等に確認したりしてみましょう。
地域の専門医療機関のリストをインターネットで公開している市区町村もあります。
また、スクールカウンセラーやかかりつけの小児科医から、診察を受けられる病院を紹介してもらえることもあるはずです。
なお、発達障害の診断が行える専門医はまだ少なく、診察を受けるまで数か月待つ可能性も考えられます。
しかし、お子さんの困り感によっては(専門家からのアドバイスによっては)数か月待ってでも検査することをオススメします。
流れ②診察に必要なものを準備する
発達障害の診断の際には、お子さんの出生から現在までの成育歴を伝える必要があります。
お子さんの母子手帳や病歴や成育歴をまとめたメモを用意しておくことがオススメです。また、学校の成績表などがあれば、さらに説明しやすくなります。
流れ③診察を受ける(診察の流れ)
- 1:問診
発達障害の特性は、乳幼児期から見られます。医師は保護者に、成育歴や日常の様子、困ったことなどを問診します。
- 2:子供との面接・行動観察
質問に答えられるお子さんには、医師が面接を行います。答えられないお子さんの場合は、一緒に遊んだりする中で、お子さんの行動や様子を観察することもあります。
- 3:知能検査・発達検査
発達障害の診断のためには、主に次のような検査が行われます
- 知能の発達を測定する検査[WISC(ウィスク)という検査が有名です]
- 子供の発達程度を測定する検査
- 心理的な傾向を測定する検査、
- MRIでの脳波検査
なお、一度の診察ではお子さんの特性が読み取れない場合は、数か月かけて繰り返し診察を行うこともあります。
まとめ:発達障害を相談できる窓口はたくさんあります
ここまでお伝えしてきた通り、発達障害の相談先は、スクールカウンセラーや医療機関、市町村の窓口、発達障害支援センターなどがあります。
また、医師による診断を受けない場合でも、専門家の支援を受けることは可能です。
そのため、「子供の発達障害について、どこに相談しよう…」と、親子だけで悩まずにぜひお近くの専門家にご相談ください。
この記事が、お子さんはもちろん、親御さんのお役に立ちましたら幸いです。
さて、私たちキズキは、発達障害や不登校やなどのお子さんのための塾&家庭教師です。
発達障害に理解のある家庭教師が、勉強面とメンタル面でお子さんのサポートを行います。
お子さんの発達障害(の可能性)に関連して、勉強やコミュニケーションについてお悩みでしたら、お気軽に無料相談をご利用ください(親御さんのみのご相談も可能です)。
監修:安田祐輔
やすだ・ゆうすけ。発達障害(ASD/ADHD)によるいじめ、転校、一家離散などを経て、不登校・偏差値30から学び直して20歳で国際基督教大学(ICU)入学。卒業後は新卒で総合商社へ入社するも、発達障害の特性も関連して、うつ病になり退職。その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。経歴や年齢を問わず、「もう一度勉強したい人」のために、完全個別指導を行う。また、不登校の子どものための家庭教師「キズキ家学」、発達障害やうつ病の方々のための「キズキビジネスカレッジ」も運営。
【新著紹介】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法』
(2022年9月、KADOKAWA)
Amazon
KADOKAWA公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2023年7月現在10校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年7月現在4校)
【著書など(一部)】
『暗闇でも走る(講談社)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』)
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
共同監修:半村進
はんむら・すすむ。1982年、茨城県生まれ。東京大学文学部卒。
小学校時代から転校を繰り返し、運動ができないこと、アトピー性皮膚炎、独特の体形などから、いじめの対象になったり、学校に行きづらくなっていたことも。大学に入学してようやく安心できるかと思ったが、病気やメンタルの不調もあり、5年半ほど引きこもり生活を送る。30歳で「初めてのアルバイト」としてキズキ共育塾の講師となり、英語・世界史・国語などを担当。現在はキズキの社員として、不登校・引きこもり・中退・発達障害・社会人などの学び直し・進路・生活改善などについて、総計1,000名以上からの相談を実施。