「我が子の不登校、転校した方がいいの?」〜親御さんへのアドバイス〜
こんにちは。不登校の方々や学校が苦手な方々を完全個別指導塾や家庭教師でサポートするキズキの佐野澪です。
この記事をご覧になっているということは、お子さんが不登校の状態なのかもしれません。
大切な我が子が学校に行けずに苦しんでいる。たいへんお悩みのこととお察しします。
お子さんが「次の一歩」を踏み出すための一つの選択肢に、「転校」があります。
とは言え、転校はお子さんにとってはもちろん、親御さんにとっても簡単なことではありません。また、転校には利点だけでなく、懸念点もあります。
本コラムでは、「子どもを転校させるべきか」とお悩みのあなたに向けて、転校の懸念点や利点、考慮すべき点などをお伝えします。
この記事が、あなたとお子さんのお悩みの解消に少しでも役立てば幸いです。
目次
転校の懸念点と利点
不登校のお子さんは、転校することで状況がどのように変わるのでしょうか?一般的に考えられることを、懸念点と利点の2つに分けてお伝えします。
①転校の懸念点
一般論として、転校には、次のような懸念点があります。
- 新しい学校になじむために、多くの時間・エネルギーが必要
- 転校先でも、同じ「問題」が起きるかもしれない
- 学習進度が異なるため、授業についていけなくなる可能性がある
- 今の学校・居住地にいる親しい友達と離れる可能性がある
- 転校後も登校できない場合、お子さんは再び心理的なダメージを追う
②転校の利点
ここまでの内容を読むと、転校は大変なことばかりに思えるかもしれません。しかし、決してそんなことはありません。
転校する大きな利点として、次のことが挙げられます。
- これまでの環境をリセットできる(心機一転、新しい気持ちで生活できる)
学校の人間関係が要因で不登校になった場合、転校はお子さんが前に進む有効な一手となるでしょう。
これまでと異なる環境での生活に対して、不安があるかもしれません。しかし、チャンスでもあるのです。
先生や友達などよい出会いに恵まれれば、これまでよりも充実した学校生活を送れる可能性もあります。
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詳しく見る「不登校と、今の学校の関係」を確認しましょう
上記のように、不登校を解消するための転校には、懸念点と利点の両方があります。
しかし、それらはあくまで一般論です。転校するかどうかは、「実際の、現在のお子さん」の状況にあわせて柔軟に考えることが大切になります。
それでは、ほかにどんなことを考慮したらよいのでしょうか?
転校がうまくいくかどうかについては、「今の学校が、不登校になった原因や不登校が続く理由に、どれだけ関係するか」を考えることが大切です。
「今の学校(クラスメイトとの人間関係、先生との相性など、その学校に在籍していることに伴う状況)」と「不登校になった原因、不登校が継続している理由」があまり関係ないようであれば、転校が効果的ではないこともあります。
「朝起きられず遅刻が続いたことで不登校になり、今も昼夜逆転気味」なケースだと、転校後にもうまく起床できなければ再び不登校になる可能性が考えられます。
「成績が悪いことを気にして不登校になり、今も勉強があまり得意ではない」ケースでも、転校先で成績が悪ければ同じ状況になる可能性があります。
こうした場合、転校よりも他の手段が有効である可能性が高いです(例えば、睡眠外来に通ったり、勉強を基礎から学び直したりすることです)。
そのため、「お子さんの不登校と、今在籍している学校との関係」を一度よく検討してみてください。
今のお子さんの状況を確認しましょう
「不登校と学校との関係」に加えて、現在のお子さんの状態も確認しましょう。
一言で表現できるものではありませんが、一つじっくり検討していただきたいことがあります。
それは、「お子さん本人に、ある程度の気力があるか」です。
転校先という新たな環境で生活するには、お子さんがある程度の気力を持っている必要があります。
しかし、不登校生活が続くと転校するかどうかにに関わらず、諸々の気力が失われていることがあるのです。そのため、次のようなことを、きめ細かく確認してみてください。
- 転校することに不安・迷いはないか
- 転校することを本人が心から納得できているのか
- ご家庭でいつもと変わった様子はないか
気力の充電が必要であれば、決して無理をさせることなく、ゆっくり休養の時間を設けましょう。
長い人生、休養を挟むことは決して悪いことではありません。いまは回り道のように見えても、あとになって振り返れば、きっと必要な時間だったと思えるときがきます。
あせりから心の活力が不十分な状態で転校をするよりも、今のお子さんに必要なことをじっくり考える時間をとるようにしてみてください。
転校に向けた3ステップ
これまでのことを踏まえた上で、転校したほうがよさそうであれば、次のことを念頭に置いて、転校に向けて準備を進めましょう。
- 「どんな学校に転校したいか(したくないか)」
- 「転校すれば、どんなふうに状況が変わるか?」
- 「お子さんはどのように変化するだろうか?」
転校に向けた3ステップ
ステップ①下調べをしましょう
まずは、転校先候補となる学校を探し、その学校の雰囲気・受け入れ姿勢、周辺環境などを事前に調べます。
具体的には、次のことを可能な範囲で調査・検討しましょう。
- 新しい学校でお子さんがうまくやっていけるイメージがわくか
- 先生はお子さんの状況に理解があるか
- 引っ越す場合、現実的に住めそうな家はあるか
- 引っ越す場合、住環境が子どもに向いているか
- 引っ越さない場合、元クラスメイトと会わない通学ルートはあるか
ステップ②今の学校と話しましょう
下調べが終わったら、お子さんが今在籍している学校と、転校について話しましょう。事務的な手続きの方法も教えてくれるでしょう。
なお、小中学生が通う公立学校は、基本的には居住地にひもづきます。つまり、「転校する場合には、新しい学校の学区に転居する必要がある」ということです。
しかし最近は、不登校という事情を理解し、転居しなくても転校できることがあります。
文部科学省も、平成28年9月14日の「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」において、「(略)就学すべき学校の指定変更や区域外就学を認めるなどといった対応も重要であること。(略)」と記しています。
例えば千葉県市原市では、「いじめや、精神の状態による不登校などで、転校することによって改善がのぞめる場合に、学区外の学校に通学する」ことを認めています。
静岡県静岡市では、「いじめ、不登校等で指定校以外の学校へ就学することで問題が解消されると見込まれる場合」、転居を伴わずに学区外への転校が可能です。
そのため、引っ越す必要のがあるかについては、学校に確認しつつ、お子さんともよく話し合いましょう。
また、学期途中の転校にするか、新学期や進級の時期に合わせるかなど、転校の時期についてもよく考えておくことをオススメします。
ステップ③転校後の生活に備えましょう
転校することが具体的になってきたら、転校後の生活に備えることが大切です。次のようなことを行って、心身ともに少しずつ慣らしてゆきましょう。
- 親子で何度か校門の前まで足を運んでみる
- 親子で新しい学校の先生に会いに行く
- お子さんの生活が不規則な場合は、起床・就寝や食事の時間を一定にする
- 勉強が不安な場合は、簡単に予習・復習してみる
不登校の専門家やサポート団体に相談しましょう
これまで、不登校のお子さんの転校に伴う注意点などをお伝えしてきました。
しかし、こうした注意点などは、親御さんだけで抱え込む必要はありません。
どんなに真剣にお子さんのことを考えても、答えが出ずに困ってしまうこともあるでしょう。家庭だけで抱え込むと、親御さんの方が疲れきってしまいます。
次のようなお悩みについては、不登校の専門家やサポート団体に相談すれば、それぞれのお子さん・ご家庭・地域事情などに応じた具体的なアドバイスがもらえるでしょう。
- 「不登校と今の学校の関係って、どうやって確認するの?」
- 「子どもに気力があるかどうかって、どう聞いたらわかるの?」
- 「転校先候補って、どうやって探せばいいの?」
- 「今の学校と、転校についてどうやって話し合えばいいの?」
- 「学校の下調べってどうするの?」
- 「転校後の生活にどうやって備えればいいの?」
- 「そもそも、うちの子の場合は転校した方がいいの?しない方がいいの?」
ぜひ、親子やご家族で悩みを抱え込まずに、不登校の専門家やサポート団体に相談してみてください。
そして、適切な支援を受けることが、親御さんにとっても、そして何よりお子さんにとっても大切です。
不登校について相談できる専門家には、次のような例があります。
- スクールカウンセラー
- 教育支援センター(適応指導教室)
- 児童相談所
- フリースクール
- 児童精神科
- 不登校の親の会
などがあります。私たちキズキ(個別指導塾・キズキ共育塾/家庭教師・キズキ家学)でも、無料相談を受け付けています。
不登校のお悩みを解消するための力になる団体・機関は、たくさん存在します。
相談することで親御さんはもちろん、お子さんの精神的なゆとりが生まれれば、思考や選択肢の幅も広がり、お子さんにとっての最善の道を見つけることつながるでしょう。
どうか親御さんだけ、ご家庭だけで抱え込まないで、専門家と話をしてくださいね。
まとめ〜あなたは一人ではありません〜
不登校を解消するための転校を考える際に必要な情報をお伝えしてきました。
不登校のお子さんが「次の一歩」に進むための選択肢の一つが、転校です。
転校には懸念点と利点の両方がありますが、それはあくまでも一般論です。
そのため、「実際の、現在のお子さん」の状況に合わせて、柔軟に考えるようにしてみてください。
不登校を解消するために本当に転校するかを決める前に、「不登校になった原因及び不登校が続く理由に、学校がどれだけ関係するか」「お子さんに気力があるか」もよく検討してください。
転校した方がよい、お子さんにある程度の気力があるなどの場合は、段階を踏み、転校に向けて準備を進めていきましょう。
そして、お子さんのことは、親御さんだけで抱え込まず、不登校の専門家やサポート団体に相談してください。
転校するかしないのか、するなら(しないなら)どう行動すべきか、それぞれのお子さんやご家庭に応じて、具体的なアドバイスがもらえます。
不登校で学校に行けない状態は、お子さん本人もつらいですが、子どもを支える親御さんも本当におつらいと思います。専門家やサポート団体は、お子さんのみならず、あなたにとっても助けや支えとなることもあるのです。
あなたは一人ではありません。どうか安心して、お子さんのこれからについて一緒にゆっくりと考えていきましょう。
監修:安田祐輔
やすだ・ゆうすけ。発達障害(ASD/ADHD)によるいじめ、転校、一家離散などを経て、不登校・偏差値30から学び直して20歳で国際基督教大学(ICU)入学。卒業後は新卒で総合商社へ入社するも、発達障害の特性も関連して、うつ病になり退職。その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。経歴や年齢を問わず、「もう一度勉強したい人」のために、完全個別指導を行う。また、不登校の子どものための家庭教師「キズキ家学」、発達障害やうつ病の方々のための「キズキビジネスカレッジ」も運営。
【新著紹介】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法』
(2022年9月、KADOKAWA)
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KADOKAWA公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2023年7月現在10校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年7月現在4校)
【著書など(一部)】
『暗闇でも走る(講談社)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』)
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
共同監修:半村進
はんむら・すすむ。1982年、茨城県生まれ。東京大学文学部卒。
小学校時代から転校を繰り返し、運動ができないこと、アトピー性皮膚炎、独特の体形などから、いじめの対象になったり、学校に行きづらくなっていたことも。大学に入学してようやく安心できるかと思ったが、病気やメンタルの不調もあり、5年半ほど引きこもり生活を送る。30歳で「初めてのアルバイト」としてキズキ共育塾の講師となり、英語・世界史・国語などを担当。現在はキズキの社員として、不登校・引きこもり・中退・発達障害・社会人などの学び直し・進路・生活改善などについて、総計1,000名以上からの相談を実施。